北極点スキー行
                                           2002,4月
極点を目指して
出発 
 
ロシア サンクドペテルブルグの南極北極研究所の所長で科学者であり、探検家でもあるビクターボヤルスキー氏が主催し、氏と南極大陸を一緒に横断した経験を持ち、アラスカで犬ぞりのマシューをされている舟津圭三さんの呼びかけで、我々日本人4名が参加した。参加に際し、舟津氏経由で届いた装備一覧を持って登山具店と相談して準備し、近くの冬山に登ってトレーニングをした。ロシアのサンクドペテルブルグ(SPB)に現地集合、ここでドイツの山岳クラブ8名(スイスの著名な登山家ペーター氏とオーストリア人を含む)、アメリカ、イギリス、オーストラリア、スエーデンからの参加者17名に、アラスカから来た舟津氏らと顔合わせをする。
SPBでは参加メンバーでエルミタージュ美術館など市内を見学し、モスクワに飛んで赤の広場などを見学、そこから北緯70度の北極圏の小さな町ハタンガに飛んだ。4月19日 ハタンガの町は、-29℃、まだ一面の雪で、息をすると鼻の中が凍ってシャリシャリ音がしていた。食事には雷鳥やトナカイの肉が出る。
ハタンガ到着の翌日、飛行機で飛び立つ予定でいたが、途中の給油ポイントのゼムリア諸島の天候が悪く、出発見合わせ。持参した装備の点検、テント設営の訓練、市内の博物館でマンモスの骨を見学したり、凍ったハタンガ河の上をスキーで歩いたりして時間を過ごした。
貨物機
貨物機で


氷上の幕営


氷上を行く


クラック


アイスブロックを越えて


アイスブロックの土手


北極点で
ハタンガから北緯89度の氷上ベース「ボルネオ」へ
 2日待っても給油ポイントの天候が回復せず、急遽、旅客機を貨物機に変更し、貨物室に燃料を積んで目的地まで無着陸で飛ぶことになった。コックピットとその後ろの狭い部屋に立つなどして4時間飛び、北極海の氷上のベース「ボルネオ」に着く。ヘリコプターそこから、さらにヘリコプターで北緯89度30分に朝の3時に到着。ヘリコプターが去った後は、完璧なまでに静寂な雪の世界。夜も沈まない太陽が斜めから照らしている。我々日本人は2人1組でテントパートナーを組み、平坦な場所を求めてテントを設営、シュラフに潜りこんだのは朝6時であった。北極の第1夜、うとうとまどろみかけた頃テントの下からゴーと遠く長く音が響いてきた。水深4000mの北極海に浮かぶ氷の上、海流によって氷が割れ、ひしめき合って氷が浮き上がる海の上であることをあらためて実感する。

北極点へ

 
4月22日 ガソリンコンロで水を作り、オートミール、ベーコン、紅茶などで朝食を取る。気温-31度、いよいよ出発、隊を二手に分け、我々日本人に途中でレスキューした中国人1人とスペイン隊4人、それにガイド(舟津氏とジェフ(英))。厳寒の中、スキーを履き、テント、食料、装備、燃料を積んだ40kgを越す橇を引き、幕営しながら直線距離で60Km先の北極点を目指す。氷が割れて押し上げられたブロックが雪面を縦横に走っている。クラックや開氷域(オープンリード)もある。これらを迂回しながら進む。雪面はサスツルギ(風紋)で波を打っていて、そりを重くする。
ガイドは白熊に対応するために、ライフルを持ったが、白熊を見かけることは出来なかった。この季節、北極は百夜の季節。太陽は15度位の角度で東南西北と回っていて昼の12時も夜中の0時も同じ明るさである。
初日は調子も出ず、2時間半ほどで行動を打ち切り。翌日からは8時間ほどの行動になった。一面の雪原で、行く手に目標物は無く、GPSを頼りに北を目指してただひたすら橇を引いて進む。「極地のそよ風はカミソリの刃」と言う言葉を実感する。

到達
4月26日 行動4日目、気温-21度、風弱く快晴、9時30分にスタート、良いペースで進んでいる。この調子なら予定より早く、今日極点に到達できそう。15時の休憩であと2時間ほどで極点に到達できそうとの予想が出る。それからはスタミナの切れた体で必死に橇を引いて歩いた。17時5分、先頭を歩いていたガイドのジェフがGPSを確認した後右手をあげた。他のメンバーのGPSもほぼ極点を示す。苦しかったがついに来た。
ビアリーやアムンゼン、植村直己など多くの冒険家が命がけでたどり着いた同じ場所に、今、自分も立っている。歩いた距離は少ないが自分の足で歩いて来て、先人の苦労が実感できた。
皆が集まり「ノースポール」と叫んで誰彼となく抱き合った。山と違ってここは海の上、極点を示すものは何もない。GPSの数値だけが極点であることを示している。とにかく来た。もう前進しなくて良いことがうれしかった。一段と高いアイスブロックに登ってみる。四方、見渡す限り雪原にアイスブロックが積み重なった白い世界が続いている。その雪原を沈まない太陽が斜めから照らしている。この世とは思えない、どこか別の惑星にでも来たような幻想的な世界、人を寄せ付けない厳しさを持った不思議な世界が広がっていた。


凍傷と写真
 行程2日目に私はうかつにも両手指9本に凍傷を負ってしまった。疲れていて指への配慮が足りず不注意としか言いようが無い。それでもメンバーも方たちの配慮で極点に到達できました。以降、行動中カメラのシャターを切ることもままならず、上記の写真は同行した横手さんと舟津さんの写真も使わせていただいております。改めて御礼申し上げます。
                            


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